僕は投資期間だけムダに16年と長いのですが、投資を始めて4,5年の間に本を読んだ以降は全て試行錯誤で相場に闘いを挑む経験値しか積んできませんでした。なので、基礎的な部分や勤勉な投資家が当たり前に知っている事を知らずにいる事が多いと思っています。
そのため、もう30代後半ですが自分のペースで意識的に自己啓発書を定期的に読み込んでいくべく昨年から投資本を読み始めました。
今回は、僕の大型株投資とバリュー投資感に影響を与えた有名過ぎる投資家バフェットさん関連の本です。
本書の特徴は
- 将来に渡って永続的に利益成長させる企業の見分け方
について数字で事例を用いて紹介しています。
僕の中で昨年200社以上の企業分析をしていく中で何か、手ごたえを感じていたのですがそれが上手く理解・表現できずでした。本書はそれを解決してくれる良著でした。(あ、そうか。こういう数字の特徴を持つ企業が目指していた姿だな。永久保存と考えているあの銘柄は、この本のP/Lのこの特徴を持つ事が如実に現れているじゃないか!と再認識したりしました。)
僕なりに考える本書のポイント(想定読者)は以下です。
- P/L、B/S、キャッシュフロー計算書の基礎が分かる方(簿記2級程度の知識がないと難しいです)
- 株価の値上がりキャピタルゲインを狙っている方
- 財務諸表から将来値上がりが期待できる有望銘柄を発掘する方法を身に付けたい方
- 将来に渡って利益が伸びていく企業の探し方を知りたい方
- 長期投資を志向している方
- グロース株、バリュー株投資家の方
書籍は以下になります。
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1.本の概要
本書は将来に渡って利益を成長し続けられる企業の特徴を
- 損益計算書(P/L)
- 貸借対照表(B/S)
- キャッシュフロー計算書
で読み解き、永続的に利益を得られ続ける企業の評価法と合わせて58のルールで構成されています。
序章では永続的優位性を持つ企業についての特徴や見分け方と何故その企業に投資するのが良いのかを紹介されています。分かり易く、突き刺さるフレーズ・表現として抜粋すると…
- 永続的優位性を持つ企業に投資するのは、的中率100%の予言に乗っているようなものだ
- すぐれた企業は、消費者の心の一部を所有している
- 永続性は金持ちへのチケットである
- 財務諸表には宝の隠し場所が書かれている
など。何故そんな自信満々に話が展開できるの?一体どういったところからそんな考えに至るの?という疑問を氷解させてくれます。
序章ではバリュー投資家の父と呼ばれるベンジャミン・グレアムさんについても触れられています。ベンジャミンが単にバリューであることに注目するのに比べて、バフェットはその中から長期に渡って利益成長を遂げ株価が何倍にも上がっている銘柄がある事に気づき、それを掘り下げていくと…..永続的優位性を持つ企業にたどり着くという筋書きです。
2章のバフェット流損益計算書の読み方では単刀直入に切り込んで分かり易い表現で展開されています。P/Lは利益を出す部分なので、勘定科目毎に要点を展開されています。例えば以下のフレーズ..
- 利益そのものの数字より、「利益の源がどこにあるか」と言う事の方が重要なのだ
- 売上高に占める売上原価が低いのは良い事である。高いのは悪い事である。
- 永続的優位性を持つ企業は高い粗利益率を示す傾向がある
- 販売および一般管理費は一貫して低い事が望ましい
- 多額の研究開発費を要する会社は競争優位性に先天的欠陥を内包している
- 1株あたり利益の長期的推移から勝者と敗者を見極める
など。この章が一番重視すべきところかなと個人的には思いました。
3章の貸借対照表の読み方は、色々な解釈が出来るので読み解くのが難しいです。全ては理解しきれないのですがここでは..
- 企業の金の使い方
- 健全な経営を行っている事でP/Lの数字を出せているか
- 不況に備えた体力は維持できているか
- 短期・長期の借り入れの比率はどうか
等が展開されています。勘定科目毎の端的な部分で参考になる考え方がいくつかありました。例えば、売掛金が低い企業は有意性が高い等。
4章はキャッシュフロー計算書のポイントを整理されていますが、ここは基本的な見方に加えて永続的優位性を持つ企業のフローの特徴を説明されています。
最終章では永続的優位性を持つ企業に対しての
- 購入に値するかの目標利益の考え方
- 購入タイミング
- 売却タイミング
について説明されています。
巻末には永続的優位性を持つ企業の財務諸表とそうでない企業のそれを比較したものがあり、言葉の定義も紹介されています。
これは、一度読んだだけでは理解しきれず何度も何度も辞書のように読み込んで自分にありの解釈・あり方の定義づけを行う必要があります。
2.役に立つ点
本書を読み込んでざっと役に立つと個人的に思った点を列挙します。
- 競合に対する長期的競争優位性を持つ企業はとてつもない富を創出する経済性が潜んでいる
- 永続的優位性を持つ企業はバリューでなくとも、適正価格で買っておけば良し
- スーパースターになる企業は自社製品を他社よりも高く、多く売る事が可能➡だから粗利益率や営業利益率が高くなるのだ
- 競争優位性を維持し続けられるならば、ビジネスの根源的価値は年を追う毎に増加し続ける(ダブルバガー、テンバガーが期待できる)
- 長期保有は莫大な利益に対して保有を継続し売却しないため、無駄なキャッシュアウト(税金を支払う)事が無く効率的
- 消費者の心の一部を所有している企業は自社商品に改良を加える必要がない。即ち設備投資が少なくて済む。その分、内部留保や自社株買い、新たな事業展開に資金が使える
一貫性が大事
- 一貫して高利益率を出し続けている
- 一貫して利益を維持する上で巨額の研究開発・設備投資が必要ではない
- 一貫して余剰金が発生し続ける
- 一貫して負債をゼロor低水準に保っている
この一貫しての部分は利益率の高低よりも重要なのだと理解。一貫して粗利益率・売上原価率・販管費率が変わらず経営し続けられている企業に価値がある。
少なくとも10年間は上記一貫性が保たれている事を担保する必要がある。
研究開発費や設備投資は一貫して低いかゼロが望ましい
➡だからメーカーをバフェットは敬遠するのか。メーカーでも永続的競争優位性を持つキーエンスはファブレス(設備投資を必要とする工場を持たない経営)だから利益率高く事業運営しているのか。
売上原価率を重視する
- 対象企業の推移(一貫性)
- 同業他社との比較
- 業界・業種比較
対象企業から得られる投資利益の比較方法
- しばしば、本書ではエクイティ・ボンドと言う事ば出てきます。
- 時間と共に利子が右肩上がりに増えていく元本保証型の株価連動指数債券の事
- このエクイティ・ボンドになぞらえて、対象企業で年利何%の利益を狙っていくのかが投資対象になり得るかの基準となりそうです。
巨額の現金を貯蓄する方法は3つあり、重視すべきは運転資金よりも多くの現金を本業で稼ぎ出している企業の方法
- 現金が長期的に貯まっていく構造になる事で読み取る。多額の現金はいずれ事業資金や自社株買い、高配当になってくる
売上高に占める売掛金の額が一貫して同業他社より低い企業は競争的優位性を持つ可能性が高い
- 掛け取引しかしてもらえない力関係か否かが分かる。売掛金は回収不足になる可能性を秘めている(不良債権化)
固定資産に占める生産設備の額は一貫して低い事が望ましい
- 設備投資過多、減損損失の恐れがある企業を見極める事が出来る
永続的優位性を持つ企業は資本的支出(投資活動のキャッシュフロー)が低くなる傾向にある
- 事業継続に対して多額の設備投資、研究開発を要さないため現金支出が減る傾向になる
配当アップよりも自社株買いを続けている企業が株主を富ませる
3.所感
P/L、B/S、キャッシュフロー計算書。全ては繋がっています。
繫がりを理解する事でその企業の
- 事業に対する姿勢、攻め方(アグレッシブなのかディフェンシブなのか)
- 経営が上手いか下手か(利益率、借り方の状況、還元のやり方)
- 株主に対する姿勢(保守的なのか、還元姿勢なのか)
が見えてきます。これは、一部分だけを見ていてはダメで
- 3計算書を繫がりで捉えて構造的に理解する
- 数年分の推移を追う
事が大事なのかと思っています。本書を読んで永続的優位性を持つ企業の条件を僕なりに数字やルールに落とし込んで、闘っていきたいと思います。
多分、これを加えると単なるバリュー株投資ではなくグロース株、グロースバリュー株も対象に入ってくると思います。
- P/Lに関する永続的優位性を持つ企業の特徴、条件を掴む
- B/Sに関する永続的優位性を持つ企業の特徴、条件を掴む
- キャッシュフロー計算書に関する永続的優位性を持つ企業の特徴、条件を掴む
- そして、永続的優位性を持つ企業の買いタイミング、売りタイミングの基準を決める
これが、今年一番のテーマです。
本書のお勧め読者を振り返って終わりたいと思います。
- P/L、B/S、キャッシュフロー計算書の基礎が分かる方(簿記2級程度の知識がないと難しいです)
- 株価の値上がりキャピタルゲインを狙っている方
- 財務諸表から将来値上がりが期待できる有望銘柄を発掘する方法を身に付けたい方
- 将来に渡って利益が伸びていく企業の探し方を知りたい方
- 長期投資を志向している方
- グロース株、バリュー株投資家の方
閲覧有難うございました!本書が気になる方は、手に取ってみては如何でしょうか?
今後も投資本を読んで自己研鑽に励みます。
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