「The Goal 企業の究極の目的とは何か」スループット経営感覚を養うのに最適 TOC 制約条件の理論


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過去に読んだ自己啓発書を昔紹介していたブログからリライトしながら紹介していきます。

記念すべき、1回目の紹介は学生時代に買って読んでいなかった本を紹介します。

全体最適について学べる本書は部分最適に定評がある日本人に読ませては競争力が付きすぎて世界を席巻してしまう。こうなっては世界経済が大混乱に陥るということで、日本語訳版が暫く出版されなかった書物です。

本書をお勧めする方

 ・製造業に努めている生産管理者、IE’er、管理職、技術者、作業者
 ・投入資金に対して収入を早く得るための方策を知りたい方
 ・効率的にものごとを解決する上で押さえておかないといけないポイントを把握されたい方

基本的に製造業、小売業に努める方には必読の書です。
それでは目次と本のレビューに移ります。

 




 

【本の概要】

紹介する本は「The Goal 企業の究極の目的とは何か」著 エリヤフ・ゴールドラット
です。

お勧めは文庫版ですが、概要を知りたい方やさらっと読まれたい方は漫画が出ているのでそちらを参考にどうぞ。


 

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ザ・ゴール コミック版 / エリヤフ・ゴールドラット 【本】
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・一番のおすすめするポイント

スループット経営の考えを学ぶには最適な良著です。スループット経営を簡単に言うと

・会社の手元に入ってくる収入(現金)を最大化するための経営手法
・収入に結び付かない取組を辞める事を気づかせてくれる経営手法

です。会社は手元に現金が無いと経営が行き詰まりひいては倒産します。そのためにはどんな事をすればよいのかを本書は分かり易く説明しています。

以下、概要です。
機械メーカーの工場長であるアレックスは採算悪化に直面し、工場閉鎖の危機に立たされていた。状況に悲観する彼だったが大学時代の恩師である物理学者ジョナに再会したことをきっかけに工場再建に向けて取組んでいく様を物語り風に書かれた作品。

要所要所に理論的に大事な考え、ノウハウが詰まっており非常に腹落ちしやすい。また、ワクワクさせてくれる。

企業の最大の目的は何か?と基本的な事から読者に考えさせて

「スループット」
「在庫」
「業務費用」

の3指標を工場内で起こっている問題を例に分かり易く説明されている。
様々な問題に対してアレックスが職場の仲間たちと改善して工場損益を挙げていく場面は興奮ものです。

一方、仕事に集中し家庭を疎かにしていたアレックスであったため、家庭生活問題も取り挙げられています。工場と家庭、妻や子供との関係に悩み・慟哭を抱える様も読んでいて興味深く応援したくなる。何よりとってもロマンティックです。

読み進んでいくうちに、TOC(制約条件)の理論が頭に入っていくようになっているのがミソ




【役に立つ点】
・企業の目的はお金を儲ける事だとアレックス自身が気付く過程
 (目的は何か自分自身で考えに考えて答えを出す事)

・工場がお金を儲けるために必要な指標
スループットの向上」:工場全体での単位時間当たりの出荷量を上げてキャッシュを回転する

在庫」:完成品だけではない、工程内の仕掛も含む。在庫がある分だけお金が眠っている。ボトルネック工程以外での在庫の滞留は、能力過多のため余計に作った余剰在庫のムダである

業務費用」:スループットの向上に貢献出来ない業務費用は全てムダである。例えば、ボトルネック外の工程の生産性を上げたとしても、工場全体でのスループットは向上しないので意味はない。意味があるとしたら、生産性を上げた事によって必要な直接労務費である人が工場全体を通して減らないと意味がない。(業務費用の削減にならない)
 
 本書ではボトルネック外の工程に生産性向上のためロボットを導入したが、作業者は解雇せずに他工程に回ってもらったとされているので、工場全体として業務費用は削減されていない。

また、ボトルネック外の工程で生産性があがったため、ボトルネックの在庫量が急激にあがり(たいていの生産現場では仕事が無い場合は他に仕事が無いか作業者に指示する傾向が強い。そのため、次々とボトルネック外の工程では製品を作ってしまうため在庫が溜まってしまう)、スループットの減少を招いた。

・「依存的事象」と「統計的変動」
依存的事象」:製造工程には、ある工程の後に他の工程を通らなければ製品を作成出来ない制約がある。

統計的変動」:工程毎の処理量は一定の変動を受ける。作業でいえば、作業者毎の能力差やムラ。設備でいえばチョコ停など。

本書では、この変動を遅い子供と早い子供がいる集団ハイキングで紹介している。

依存的事象と統計的変動を組み合わせた事例として、サイコロを用いてその目を生産能力として表す事でも表現している。(ここは凄い分かりやすい。普通、6の目まであるサイコロを用いてサイコロを振っていくと、工程全体のスループットは目の平均である3.5になると思うのが普通だけど実際は…..後に工場での実例を元に再復習できる仕組みになっているのは読者に優しいと感じた。)

・「統計的変動」を考慮すると、ボトルネック外の工程はボトルネック工程以上に能力を持たないといけない事

たいていの企業はボトルネック工程に生産能力を合わせようとしてしまう。そのため、ボトルネック工程とほぼ同様の生産能力になった場合、統計的変動が全工程でおきて、ボトルネックに仕掛が無くなりフル稼動できなくなってしまう。ボトルネックを非稼動にする事で、単位時間当たりに儲かるスループットの量に比例してキャッシュが失われる。そのため、各工程で統計的変動があることを考慮するためボトルネック外の工程は余力をもっておかなければならない。また、後工程にいくほど余力を多くもたないといけない(前の工程までの統計的変動を吸収するための余力を持っておかないといけないため)

→この辺はブルウィップ効果の事を言われていますね。

・ボトルネック工程1時間当たりの生産能力=工場のスループットになるので、ボトルネックのコストは工場の総費用÷ボトルネックの総稼動時間より求められる。このため、ボトルネックの稼動時間を如何に増やすのか、また如何にして負荷を減らすかが重要である。

増やすための施策としては以下が挙げられる。
1.昼休み休憩時間中の非稼動を失くすために、休みは交代制で取る
2.ポカミス要因でボトルネックに通った後に不良になる製品を低減させるアクションを取る事
3.納期が迫っている製品だけを優先してボトルネックに通し、見込み在庫用で作ろうとしている製品はゼロにする
4.ボトルネック工程を通る必要が無い製品を探し、ボトルネックを通らない工程系列の製品を増やし、ボトルネックの負荷を軽減する
5.他の工程で、ボトルネック工程の処理を行えないか検討し、ボトルネック工程の負荷を軽減する
6.下請け業者にボトルネック工程を依頼して、ボトルネック工程の生産性を上げる

ここの概念は即効性の改善にとても重要。まず、製造現場の改善にメスを入れる場合、IE’erはたいていここに着目します。

・ボトルネックには今日必要な部品以外は、ボトルネック外工程で処理してはいけない。なぜならそれをやってしまうとボトルネック工程前に、大量の仕掛の山が出来てキャッシュが眠るからだ。たとえ、ボトルネック外工程が手待ちになっていてもそれ以上作ってはいけない。

・ボトルネック工程では、1回の作業で可能な限りネック工程で1回に処理できるMAXの量を投入する。何故なら、それだけボトルネック工程の効率が上がるからだ。
 例えば、製品を作って顧客に運搬するトラックがボトルネック工程としよう。そうした場合、トラック内の積載効率を100%にして運搬することと、50%で運搬することを考えれば一目両全だ。
 そういう仕組みにするスケジューリングを考えて、前段取しておくことでボトルネック工程の生産数量を上げることが出来る。

*ボトルネックが常に稼働するように仕掛は一定備えておかないといけない。ここは極めて重要

・1ロットのロットサイズを小さくすることで以下の利点がある。
1.ロットサイズを小さくするため、ロット毎の処理時間が短くなり、生産期間が短縮される。即ち、スループットが向上する。
2.投入する資材の量も半分になるため、工程間の仕掛量も半分になり、眠る金が削減されキャッシュフローが改善される。

*ただし、ロットサイズダウンによって、ボトルネック外工程の段取工数が増えてもボトルネック工程よりも処理能力が上で費用がかからない場合に限る。


・資材が工場に入ったときから完成品の一部として工場から出て行く時間は以下の4つに分けられる。
1.セットアップ:段取時間
2.プロセスタイム:処理時間、これを経て付加価値が付けられる
3.キュータイム:部品の処理に必要な設備のリソースが他の部品の処理を行っている間、その機械の前で列を作って待っている時間。

・生産工場での制約条件(TOC)の理論は以下のステップを繰り返して改善を進めていく。
1.ボトルネック工程を見つける
2.ボトルネック工程をどう活用するか決める
3.他の全ての工程を2の決定に従わせる
4.ボトルネック工程の能力を高める
5.4でボトルネックが解消したら、1に戻る







【感想】
520ページに及ぶ分厚い本でした。読み応えあります。

アレックスが恩師ジョナの問いに対して「何故そうなるんだ?」と本質を突き詰めて仲間と問題を解決していくところが爽快です。

本質に迫る過程でTOCの理論がよく分かるように工夫されていた点も素晴らしいです。

妻のジュリーとのやりとりについてもハラハラどきどきさせられました。ジュリーのヒステリックな面は………現実を彷彿とさせます。嫁さん…..。
 でも、本当は好き合ってる。そこがクスって笑ってみてしまうところです。

この本を書いたエリヤフ・ゴールドラット博士は高価なスケジューリングのソフトをより多くの企業に知ってもらうために、The Goalを書いたそうです。

ところがソフトを用いて現場を改善するよりも、本を見た後に改善に取組まれた方が早く安価に改善が進んだという実績が出ています。これに対して憤りを感じているようでした。

現場の人間関係の構図もよく表しているなぁと思いました
通常とはかけ離れた発想を提案すると現場ではひどい抵抗を受けます。それをどう解決していくかが、改善の一番難しいところで、そこの泥臭さも書かれています。

他社の工場は分からないが、自分の会社ではIE的アプローチで改善を提案すると、基本的に激しい抵抗に合います。結局、改善は人間関係を如何に上手く回していくかで進むんだな….と思います。
(この部分、リライトした8年後に今書いている訳ですが、今でも変わらずそう思います。)

気になった方は本書を取ってみてはいかがでしょうか?


 

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